こんにちは、ENGかぴです。
Arduino UNO専用のETHERNET SHIELDを実装するとEthernetライブラリを使用してLAN通信ができます。UDP通信を実装しユニキャスト及びブロードキャスト通信でDHT20から取得した温湿度のデータを送信して動作確認を行いました。
DHT20モジュールはGrove-Temperature & Humidity Sensor V2.0(DHT20)(Seeed Studio) 及びETHERNET SHIELDはArduino Ethernet Shield 2を使用しています。
ローカルサーバーを模擬するためにESP32-WROOM-32E開発ボード(秋月電子)を使用してWiFiをサーバーモードにして使用します。下記記事で使用したサーバーを流用します。
ESP32-WROOM-32Eにサーバーを実装してレスポンスする
アクセスポイントにはWZR-HP-G300NH(バッファロー:生産中止)を使用し、ETHERNET SHIELDとLANケーブルで接続します。
ETHERNET SHIELDはアイキャッチ画像のようにArduino UNOに差し込むだけで使用することができます。Arduino UNO(以下Arduinoとします。)を対象とします。Arduinoのライブラリを使用して動作確認したことをまとめています。
Arduinoで学べるマイコンのソフト開発と標準ライブラリの使い方
Ethernetライブラリを使用する

ETHERNET SHIELDはイーサネットコントローラーにW5500が使用されておりSPI通信をイーサネットに変換することができます。Arduino環境でイーサネットのプロトコルであるTCP/IPやUDP/IPによる通信を構築することができます。
ローカルサーバーを模擬するためにESP32-WROOM-32Eをサーバーモード(以下サーバーESP32とします。)にして使用します。アクセスポイントとETHERNET SHIELDはLANケーブルで接続します。
UDPの特徴は全体に一斉送信するブロードキャスト(マルチキャスト)通信です。ブロードキャストはデータを送信する側の端末から接続しているすべての端末にデータを送信します。マルチキャストはネットワークのクラス全体の端末にデータを送信します。
例えば学校の全体朝礼で校長先生のお話を聞くのはブロードキャストで1年3組のクラス担任による朝礼がマルチキャストのイメージです。
複数の端末にデータを送信するブロードキャスト(マルチキャスト)に対して1対1の端末でデータを送信することをユニキャストと言いますが、相手の接続状態を確認とパケットの整合性を確認するTCPに多く使用される傾向があります。
UDPのブロードキャストとユニキャストの動作確認を行うためESP32サーバーを2台準備します。
ユニキャストでは①サーバーと②サーバーのそれぞれにArduinoから温湿度データを含む文字列を送信しサーバーからの応答を確認します。ブロードキャストでは文字列の送信に対して①と②が同時に応答するかを確認します。
EthernetライブラリはArduino UNO用に標準搭載されておりスケッチ例が各種準備されています。本記事ではスケッチ例の「UDPSendReceiveString」を流用して動作確認を行っています。
Ethernetライブラリのインクルードからを初期化及び関数の使用方法を説明します。
ライブラリの準備と初期化
#include <SPI.h>
#include <Ethernet.h>
#include <EthernetUdp.h>
byte mac[] = {
0x83, 0x61, 0x0A, 0xAE, 0x73, 0xA8
};
IPAddress ip(192, 168, 11, 2);//ArduinoのIP
IPAddress ipbrd(255, 255, 255, 255);//ブロードキャスト
IPAddress server(192, 168, 11, 10);//サーバーのIP
EthernetUDP Udp;
void setup() {
Ethernet.begin(mac, ip);//mac及びipで初期化
if (Ethernet.hardwareStatus() == EthernetNoHardware) {
Serial.println("Ethernet shield was not found. Sorry, can't run without hardware. :(");//イーサーネットシールドの接続が確認できない場合表示
while (true) {
delay(1);
}
}
if (Ethernet.linkStatus() == LinkOFF) {
Serial.println("Ethernet cable is not connected.");
}
Udp.begin(10002); //ポート10002でUdpポートオープン
}
EthernetライブラリはSPI通信を使用するためEthernet.hとSPI.hの2つのライブラリをインクルードする必要があります。またUDP通信を使用するためEthernetUdp.hをインクルードします。
イーサーネットコントローラーは固有のMACアドレスが割り振られているため6バイトの値を配列で準備します。ETHERNET SHIELDの裏面にMACアドレスが貼り付けてあります。
IPAddressクラスの変数としてipをインスタンス化し、引数をIPアドレスを指定します。例ではIPアドレスに「192.168.11.2」を指定しています。同様にserverをインスタンス化し、引数にサーバーのIPアドレスを指定します。例ではサーバーESP32のIPアドレスの「192.168.11.10」とブロードキャストアドレスの「255.255.255.255」を準備しています。
EthernetUDPクラスの変数としてUdpをインスタンス化(Udpオブジェクト)します。
Ethernetオブジェクトのbegin()関数でイーサーネットの初期化を行います。第1引数にMACアドレスを指定します。第2引数にIPアドレスを指定します。
hardwareStatus()関数はETHERNET SHIELDの接続を確認します。例では接続が確認できなければETHERNET SHIELDが確認できるまでループさせるようにしています。
linkStatus()関数はイーサーネットに接続状態を確認します。ケーブルの抜き差しでリンクのステータスが切り替わるためUDP通信を行う際の接続状態の確認に使用します。
Udpオブジェクトのbegin()関数で指定したポートでUDP通信を開始します。引数にUDP通信を行うポートを指定します。
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UDPデータと準備と送信
Udp.beginPacket(server, localPort);//UDP通信パケット準備開始
//Udp.beginPacket(ipbrd, localPort);//ブロードキャスト通信の場合
Udp.print("Humidity: ");
Udp.print(temp_humi[0]);
Udp.print(" %\t");
Udp.print("Temperature: ");
Udp.print(temp_humi[1]);
Udp.print(" *C");
Udp.endPacket(); //パケット準備完了(送信)
UdpオブジェクトのbeginPacket()関数でUDPパケットの準備の初期化を行います。第1引数はサーバーのアドレスを指定します。第2引数は送信するポートを指定します。
例ではIPAddressクラスでインスタンス化したserverのIPアドレスを指定し、サーバーのポートに10002(サーバーESP32でポート10002を指定している)を指定しています。
Udpオブジェクトのprint()関数で文字列を指定します。println()関数を使用すると改行コードが最後に挿入されます。例ではDHT20モジュールから取得したデータを文字列に挿入して指定しています。
endPacket()関数でパケットの終了を発行するとUDP通信を行います。
UDPデータの受信
int packetSize = Udp.parsePacket();
if (packetSize){
Serial.print("Received packet of size ");
Serial.println(packetSize);
Serial.print("From ");
IPAddress remote = Udp.remoteIP();
for (int i=0; i < 4; i++) {
Serial.print(remote[i], DEC);
if (i < 3) {
Serial.print(".");
}
}
memset(packetBuffer,0,sizeof(packetBuffer));
Udp.read(packetBuffer, UDP_TX_PACKET_MAX_SIZE);
//UDPデータの読み込み
}
UdpオブジェクトのparsePacket()関数でパケットが存在しているかを確認します。存在していれば1以上の値となるのでデータの読み込みを行います。
パケットがどの端末のものかを判別する場合はremoteIP()関数で送信元のIPを確認します。4バイトのデータで構成されているためDEC(10進数)の文字列に変換してシリアルモニターに表示するようにしています。
read()関数でパケットのデータを読み込みます。第1引数に読み出したデータを格納するアドレスを指定します。第2引数は読み込むサイズを指定します。
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DHT20モジュールからデータを取得
Arduino IDEでDHTライブラリを追加してDHT20モジュールから温湿度のデータを取得します。Arduino IDEのライブラリマネージャの検索欄にgrove dht(ライブラリ名をそのまま入力しても良い)を入力するとライブラリの候補が表示されます。
候補の中からGrove Temperature And Humidity Sensorをインストールします。使用例は以下の通りです。
#include <DHT.h>
#include <Grove_Temperature_And_Humidity_Sensor.h>
#include <Wire.h>
DHT dht(DHT20); //DHT20を指定してインスタンス化
float temp_humi[2];
void setup() {
Serial.begin(115200);
Wire.begin();
dht.begin();
}
void loop() {
dht.readTempAndHumidity(temp_humi);//データを取得
Serial.print("Humidity: ");
Serial.print(temp_humi[0]);
Serial.print(" %\t");
Serial.print("Temperature: ");
Serial.print(temp_humi[1]);
Serial.println(" *C");
delay(2000);
}
Arduino IDEのスケッチタブの「ライブラリをインクルード」からGrove Temperature And Humidity Sensorを選択します。エディターにDHT.h及びGrove_Temperature_And_Humidity_Sensor.hが追加されますが、DHT.hのみのインクルードでも問題ありません。DHT20はI2C通信を使用するのでWire.hも含めてインクルードします。
DHTクラスの変数としてdhtに引数を指定してインスタンス化(dhtオブジェクト)します。DHT20モジュールを使用するためDHT20を指定します。
DHT.hを選択した状態で「Go to Definition」をクリックするとDHT.hが開けるので対象のDHTモジュールのタイプを定義を確認することができます。
Wire.begin()でI2C通信の初期化を行い、dhtオブジェクトのbegin()関数でDHT20の初期化を行います。
readTempAndHumidity()関数を使用すると温湿度のデータを取得することができます。引数に取得したデータを格納するアドレスを指定します。
動作確認

ArduinoにETHERNET SHIELDを接続します。LANケーブルをアクセスポイントに接続してイーサネット通信を行います。電源を入れるとDHT20の測定が開始し、UDP通信でサーバーに温湿度データを送信します。
ArduinoはサーバーからUDPパケットを受信するとLED1(LED2)を点灯して通知します。①サーバーESP32の場合はLED1が点灯し、②サーバーESP32の場合はLED2が点灯します。
Arduinoの7ピンをGNDに接続すると①サーバーESP32が送信先になり、6ピンをGNDに接続すると②サーバーESP32が送信先になります。それ以外はブロードキャスト通信になります。
サーバーESP32は2台使用しますが、IPを切り替えるため2台目の5ピンをGNDに接続します。サーバーESP32はArduinoからUDPパケットを受信するとシリアルモニターにパケット情報を表示し、LED1ON(LED2ON)の文字列のパケットで応答します。
Arduinoから受信したUDPパケットを確認するため①サーバーESP32をシリアルモニターで確認します。電源投入後はアクセスポイントが動作開始するまで数秒間待機します。WiFi接続が確立するとサーバーとして動作開始します。

ArduinoからUDPパケットを受信するとUDPパケットの種別及び送信先のIPとポートを表示します。Data:以降はパケットの内容を表示しています。Arduinoから送信した温湿度データが文字列に表示できています。
サーバーESP32はUDPパケットを受信するとArduinoにUDPパケットで応答します。①サーバーESP32の場合はLED1ON、②サーバーESP32の場合はLED2ONの文字列で応答します。Arduinoのシリアルモニターを確認します。

Arduinoからユニキャストで①サーバーESP32にパケットを送信すると「192.168.11.10」からLED1ONの応答でLED1が点灯することが確認できました。また②サーバーESP32にパケットを送信すると「192.168.11.20」からLED2ONの応答でLED2が点灯することが確認できました。

Arduinoからブロードキャストのパケットを送信すると2つのサーバーが同時に応答し、LED1とLED2が同時に点灯することが確認できました。
ソースコード全体
ソースコードは記事作成時点において動作確認できていますが、使用しているライブラリの更新により動作が保証できなくなる可能性があります。また、ソースコードを使用したことによって生じた不利益などの一切の責任を負いかねます。参考資料としてお使いください。
リンクからZIPファイル形式のファイルをダウンロードし、任意の場所に展開していただくとテキストファイルが生成されます。
サーバーESP32のアドレスは5ピンをGNDに接続すると「192.168.11.20」に切り替えることができます。
関連リンク
Arduinoのライブラリを使って動作確認を行ったことを下記リンクにまとめています。
Arduinoで学べるマイコンのソフト開発と標準ライブラリの使い方
Seeeduino XIAOで学べるソフト開発と標準ライブラリの使い方
ESP32-WROOM-32Eで学べるソフト開発と標準ライブラリの使い方
最後まで、読んでいただきありがとうございました。