こんにちは、ENGかぴです。
ESP32-WROOM-32EはWiFiを使用してUDP通信を行うことができます。UDP通信ライブラリを使用してUDPサーバー及びUDPクライアントを実装し、ブロードキャスト及びユニキャストの動作確認を行いました。
ESP32-WROOM-32Eを3台使用します。2台をサーバーとして使用し、1台をクライアントとして使用します。クライアントにBME280モジュールを実装して温湿度気圧のデータを取得してサーバーにデータを送信します。
ESP32-WROOM-32E開発ボード(秋月電子)を使用しArduino IDEで開発を行います。また、温湿度気圧センサーのAE-BME280(秋月電子)を使用しています。アクセスポイントにはWZR-HP-G300NH(バッファロー:生産中止)を使用しています。
ESP32-WROOM-32E(以下ではESP32とする)を使って動作確認したことをまとめています。
ESP32-WROOM-32Eで学べるソフト開発と標準ライブラリの使い方
UDPライブラリを使用する

ESP32のWiFiを使用してデータを送信すると標準ではTCP/IPによる通信になります。UDP通信を行う場合はUDP通信ライブラリを実装する必要があります。
ESP32-WROOM-32Eを3台サーバーモード(以下サーバーESP32とします。)で起動してアクセスポイントに接続します。クライアントESP32はUDPクライアントとしてサーバーESP32にUDPデータを送信します。
UDPの特徴は全体に一斉送信するブロードキャスト(マルチキャスト)通信です。ブロードキャストは接続しているすべての端末にデータを送信します。マルチキャストは接続しているネットワークのクラス全体の端末にデータを送信します。
校内放送がブロードキャストでクラス担任がクラスの生徒に連絡するのがマルチキャストのイメージです。
複数の端末にデータを送信するブロードキャスト(マルチキャスト)に対して1対1の端末でデータを送信することをユニキャストと言います。相手の接続状態を確認とパケットの整合性を確認するTCP通信が多く使用される傾向があります。
ユニキャストでは①サーバーと②サーバーのそれぞれにクライアントESP32から温湿度気圧データを含むパケットを送信しサーバーからの応答を確認します。ブロードキャストではクライアントESP32のパケットに対して①と②が同時に応答するかを確認します。
UDPライブラリはESP32 Dev Module用のスケッチ例にESP32 Async UDPが準備されています。本記事ではスケッチ例の「AsyncUDPClient」及び「AsyncUDPServer」を流用して動作確認を行っています。
UDPライブラリのインクルードからを初期化及び関数の使用方法を説明します。
ライブラリの準備と初期化
#include "AsyncUDP.h"
unsigned int localPort = 10002; // local port to listen on
AsyncUDP Udp;
void setup() {
if(Udp.listen(localPort )) {
Udp.onPacket([](AsyncUDPPacket packet){
//UDPパケットの受信処理
ledCnt(packet.data());//受信後の処理を行う関数を追加
packet.printf("LED%dON",num);//reply to the client
});
}
}
UDP通信ライブラリを使用するためAsyncUDP.hをインクルードします。非同期通信で受信と送信を管理するライブラリです。
AsyncUDPクラスの変数としてUdpをインスタンス化(Udpオブジェクト)します。Udpオブジェクトのlisten()関数でUDP通信を行うポートを指定します。ポートを指定しない場合はIPが自局のものであればすべて受け付けます。
UdpオブジェクトのonPacket()関数はパケットを受信した時に遷移させる関数を登録します。登録する関数はAsyncUDPPacketクラスのコンストラクターです。コンストラクターの引数がAsyncUDPPacketクラスの変数になっており引数が戻り値になるため引数からUDPパケットの情報を取得することができます。
パケットを受信するとコンストラクターの関数がコールさせるためコンストラクターの関数内に処理を追加する必要があります。例では自作の関数ledCnt()を追加しています。
Udp.onPacket(UdpRcv);
void UdpRcv(AsyncUDPPacket packet){
//UDPパケットの受信処理
}
コンストラクターの関数内に処理を追加する方法の他にAsyncUDPPacketクラスの引数を持つ関数を登録して遷移させる方法があります。コンストラクターの処理が長くなる場合は関数を別途宣言して処理を追加する方法が良い場合もあります。
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UDPデータと準備と送信
IPAddress server(192, 168, 11, 10);//サーバーのIP
char txpacket[64];
sprintf(&txpacket[0], "Temperature: %3.2f *C Humidity: %3.0f %% Pressure: %4.2f hPa", bme280Meas[BME280_TEMP] , bme280Meas[BME280_HUMI], bme280Meas[BME280_PRES]);
//ユニキャストで送信
Udp.writeTo((uint8_t*)&txpacket[0],sizeof(txpacket),server,localPort);
//ブロードキャストで送信
Udp.broadcastTo((uint8_t*)&txpacket[0],sizeof(txpacket),localPort);
UdpオブジェクトのwriteTo()関数を使用するとUDPパケットを宛先に指定して送信することができます。第1引数に送信するデータを格納しているアドレスを指定します。第2引数に送信するデータのサイズを指定します。
第3引数に送信相手のIPアドレスを指定します。第4引数に送信相手のポートを指定します。
例ではIPAddressクラスでインスタンス化したserverのIPアドレスを指定し、サーバーのポートに10002を指定しています。
ブロードキャスト通信を行う場合はUdpオブジェクトのbroadcastTo()関数を使用します。第1引数に送信するデータを格納しているアドレスを指定します。第2引数に送信するデータのサイズを指定します。第3引数に相手先のポートを指定します。
connect()関数で相手先に接続してwrite()関数で1バイトずつ送信する方法もありますがタイミングによってはパケットが分割されてしまうためsprintf()関数で温湿度気圧のデータを含めた文字列を生成し、writeTo()関数(BroadcastTo()関数)で同一のパケットで送信できるようにしています。
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BME280モジュールからデータを取得
Arduino IDEのライブラリマネージャの検索欄にbme280を入力するとライブラリの候補が表示されます。候補の中からGrove-Barometer Sensor BME280 by Seeed Studioをインストールします。使用例は以下の通りです
#include "Seeed_BME280.h"
BME280 bme280;
void setup() {
Serial.begin(115200);
if(!bme280.init()){
Serial.println("Device error!");
}
}
void loop() {
float press;
Serial.print("Temperature = ");
bme280Meas[BME280_TEMP] = bme280.getTemperature();//温度
Serial.print(bme280Meas[BME280_TEMP]);
Serial.println(" C");
Serial.print("Humidity = ");
bme280Meas[BME280_HUMI] = bme280.getHumidity();//湿度
Serial.print(bme280Meas[BME280_HUMI]);
Serial.println(" %");
press = bme280.getPressure();//気圧
Serial.print("Pressure = ");
bme280Meas[BME280_PRES] = press / 100.0F;
Serial.print(bme280Meas[BME280_PRES]);
Serial.println(" hPa");
delay(2000);
}
Seeed_BME280.hをインクルードします。BME280クラスのbme280をインスタンス化(bme280オブジェクト)して使用します。
bme280オブジェクトのinit()関数でBME280の初期化を行います。BME280ライブラリのスレーブアドレスはデフォルトで0x76になっているため、AE-BME280のスレーブアドレスを0x76で使用する必要があります。
getTmeperature()関数は温度情報を取得します。getHumidity()関数は湿度情報を取得します。getPressure()関数は気圧情報を取得します。気圧の単位はPaなのでhPaで表示する場合は100で割った値に換算する必要があります。
動作確認

クライアントESP32は電源を入れるとBME280の測定が開始し、UDP通信でサーバーに温湿度気圧のデータを含めたパケットを送信します。
クライアントESP32の33ピンをGNDに接続すると①サーバーESP32が送信先になり、32ピンをGNDに接続すると②サーバーESP32が送信先になります。それ以外はブロードキャスト通信になります。
サーバーESP32はIPを切り替えるため2台目の5ピンをGNDに接続します。サーバーESP32はクライアントからUDPパケットを受信するとシリアルモニターにパケット情報を表示し、LED1ON(LED2ON)の文字列のパケットで応答します。
クライアントESP32はサーバーESP32からUDPパケットを受信するとLED1(LED2)を点灯して通知します。①サーバーESP32の場合はLED1が点灯し、②サーバーESP32の場合はLED2が点灯します。
クライアントESP32から受信したUDPパケットを確認するため①サーバーESP32をシリアルモニターで確認します。電源投入後はアクセスポイントが動作開始するまで数秒間待機します。WiFi接続が確立するとサーバーとして動作開始します。

クライアントESP32からUDPパケットを受信するとUDPパケットの種別及び送信先のIPとポートを表示します。Data:以降はパケットの内容を表示しています。クライアントESP32が送信したパケットデータ表示できています。
サーバーESP32はUDPパケットを受信するとクライアントESP32にUDPパケットで応答します。①サーバーESP32の場合はLED1ON、②サーバーESP32の場合はLED2ONの文字列で応答します。クライアントESP32のシリアルモニターを確認します。

クライアントESP32からユニキャストで①サーバーESP32にパケットを送信すると「192.168.11.10」からLED1ONの応答でLED1が点灯することが確認できました。また②サーバーESP32にパケットを送信すると「192.168.11.20」からLED2ONの応答でLED2が点灯することが確認できました。

クライアントESP32からブロードキャストのパケットを送信すると2つのサーバーが同時に応答し、LED1とLED2が同時に点灯することが確認できました。
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ソースコード全体
ソースコードは記事作成時点において動作確認できていますが、使用しているライブラリの更新により動作が保証できなくなる可能性があります。また、ソースコードを使用したことによって生じた不利益などの一切の責任を負いかねます。参考資料としてお使いください。
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サーバーESP32のアドレスは5ピンをGNDに接続すると「192.168.11.20」に切り替えることができます。
関連リンク
Arduinoのライブラリを使って動作確認を行ったことを下記リンクにまとめています。
Arduinoで学べるマイコンのソフト開発と標準ライブラリの使い方
Seeeduino XIAOで学べるソフト開発と標準ライブラリの使い方
ESP32-WROOM-32Eで学べるソフト開発と標準ライブラリの使い方
最後まで、読んでいただきありがとうございました。