こんにちは、ENGかぴです。
VB.NET(Visual Basic 2022)でUDP通信をタスクを生成して行う方法をまとめました。同期処理の受信待機をタスクで処理するためアプリが受信待ちで固まることなく処理が行えます。
Windowsフォームアプリケーション(.NETFramework)のデスクトップアプリを対象としています。以下はVisual Basic 2022をVB2022とします。
タスクを生成せず非同期処理を使用する方法を下記記事にまとめています。
VB.NET(VB2022)のUDP通信を非同期処理で行う方法
外部機器として下記記事のArduino UNO(以下Arduinoとする)を使用しています。Arduinoから送信されるUDP通信パケットを受信して表示します。
ArduinoのEthernetライブラリでUDPクライアントを実装する
VB.NET(VB2022)のデスクトップアプリで動作確認したことを下記リンクにまとめています。
VB.NET(VB2022)のデスクトップアプリ開発でできること
UDP通信を確認するアプリ
UDP通信を行う接続先のIPアドレスとポートを入力して「接続」ボタンをクリックするとUDP通信の接続を行い、「送信」ボタンで横のテキストボックスに入力した文字列を送信します。
接続先からパケットを受信すると受信したパケットデータをテキストボックスに表示して確認できるようにします。コントロールの実装やイベントの追加は下記記事と同様です。
VB.NET(VB2022)のUDP通信を非同期処理で行う方法
各種コントロールの配置とデザイン名は以下の通りです。
タスク処理で使用する変数について説明します。
Imports System.Net
Imports System.Net.NetworkInformation
Imports System.Net.Sockets
Imports System.Text
Public Class Form1
Dim cts As Threading.CancellationTokenSource
End Class
Form1クラス直前でインポート(Imports)しているものはネームスペースを使用する意味です。7行目のctsはSystem.ThreadingネームスペースのCancellationTokenSourceクラスでインスタンス化する宣言になります。
例ではアプリ全体で使用するctsをインスタンス化しています。クラス内で宣言した場合はアプリを終了しない限りメモリを割り当てた状態になります。ctsはUDP接続の受信待ちのタスクをキャンセルする場合に使用します。
UDP通信をタスクを使って行う方法
Button1をクリックするとUDP接続と受信待ちのタスクの生成を行います。またButton2をクリックすると受信待ちのタスクのキャンセルとUDP接続を切断します。
タスク処理ではUDP受信のエンドポイント(パソコンのイーサネットのIPアドレス及び受信ポート)の指定に下記記事で取得したIPアドレスを使用します。
VB.NET(VB2022)でLANのIPアドレスを取得する方法
UDP接続を行う
System.Net.Socketsのネームスペースを使用します。TextBoxに入力したIPアドレスやポートを使用して接続先と接続を行います。Button1のクリックイベントに処理を追加します。
Private Sub Button1_Click(sender As Object, e As EventArgs) Handles Button1.Click
Dim remoteIp As String = ""
If Button1.BackColor = Color.LightGreen Then
remoteIp = TextBox1.Text & "." &
TextBox2.Text & "." &
TextBox3.Text & "." &
TextBox4.Text
localPort = TextBox8.Text
remotePort = TextBox5.Text
Try
ClientUdp = New UdpClient(localPort)’ポートを指定して初期化
ClientUdp.Connect(remoteIp, remotePort)
'タスクの生成
Task.Run(Sub()
RecvWait()
End Sub)
Catch ex As Exception
End Try
End If
End Sub
remoteIpは接続先のIPアドレスの文字列の生成に使用します。「192.168.11.2」のような文字列を生成するため文字列の&を使用して文字列を生成しています。localPortはUDP接続に使用する自局のポート番号です。remotePortは接続先で使用するポート番号です。
UdpClientクラスをローカルポートを指定し初期化してインスタンス化します。インスタンス化したClientUdpを使用してUDP通信の管理を行います。
接続に失敗した時アプリが強制終了しないようにTry Catch文で処理を行います。
Connect()メソッドで接続要求を出します。第1引数に接続先のIPアドレス、第2引数に接続先のポート番号を指定します。IPアドレスはホスト名を指定する方法もあります。
Connect()メソッドで接続が確立すると送信ができるようになります。受信は非同期のタスクを生成して別のスレッドで行います。タスクはSystem.Threading.tasks.taskクラスのRun()メソッドの引数に処理を追加して生成します。例では自作のRecvWait()関数に遷移するようにしています。
Private Sub RecvWait()
Dim remoteIp As String = ""
Invoke(
Sub()
TextBox7.Text = "スタート "
End Sub
)
taskstop = False
Dim getByte() As Byte
cts = New Threading.CancellationTokenSource()
While cts.Token.IsCancellationRequested = False
Try
Dim loc_ip As IPEndPoint = New IPEndPoint(IPAddress.Loopback, localPort)
getByte = ClientUdp.Receive(loc_ip)
For i = 0 To getByte.Length - 1
RxRingSet(getByte(i))
Next
Catch ex As Exception
End Try
End While
Invoke(
Sub()
TextBox7.Text &= "接続停止"
End Sub
)
End Sub
RecvWait()関数はメイン処理とは別のタスク(スレッド)で動作します。そのためメイン処理のコントロールに直接アクセスすることができません。メイン処理のコントロールにアクセスする場合はInvoke()メソッドで生成したデリゲート(メイン処理とスレッドを繋げる門)を使用します。例ではTextBox7のTextプロパティに「スタート」と「接続停止」を指定しています。
Threading.CancellationTokenSource()メソッドでタスクのキャンセルに使用する変数(cts)をインスタンス化します。
UDPパケットの受信はWhile処理で繰り返して行います。タスクがキャンセルされない限りループを抜けずにUDPパケットの受信を行うようにします。タスクのキャンセルやソケットの消失でアプリが強制終了しないようにTry catch文を使用して同期受信を行います。
IPEndPointクラスをローカルのIPアドレスとポートを指定しインスタンス化し、Receive()メソッドの引数にエンドポイントを指定すると同期受信スタートします。UDPパケットを受信すると配列にデータが格納されます。
配列のデータをアプリで共通の配列に格納し、TextBox7の表示用に使用します。
Receive()メソッドは同期受信するためメイン処理で使用するとアプリが占有されフリーズしたように固まってしまいますが、非同期のタスクで同期受信させるためメイン処理に影響を与えることなくUDPデータを受信することができます。
タスクをキャンセルと接続切断
Private Sub Button2_Click(sender As Object, e As EventArgs) Handles Button2.Click
If Button2.BackColor = Color.LightGreen Then
cts.Cancel() 'タスクをキャンセル
ClientUdp.Close()
End If
End Sub
Button2はタスクのキャンセルとUDP接続の切断を行います。タスクのキャンセルはインスタンス化したctsのCancel()メソッドを使用します。
ctsのTokenプロパティはキャンセルの要求を受け付けるとIsCancellationRequestedがTrueになります。タスクの同期受信はタスクのキャンセルされない限り繰り返すようにしていますが、キャンセル要求によりTrueになるとループから抜け出しText7のTextプロパティに「接続停止」を表示します。
UdpClientのClose()メソッドでUDP接続を切断します。
動作確認(デバッグ)
パソコンとArduino UNO+Ehternet Shield Rev2をLANケーブル(クロス)で接続します。ArduinoのIPアドレスを192.168.11.2にしているのでパソコンのLANポートを同じクラスのIPアドレスとして192.168.11.100にしています。パソコン及びArduinoのLANポートは10002を使用します。
Arduinoは電源を入れると5秒間隔でUDPパケットを送信します。アプリでArduinoのIPアドレスとポートを指定して接続するとArduinoから受信したUDPパケットのデータをTextBox7に表示します。
動作確認のためデバッグを行います。デバッグの開始はエディタ上部の「▶開始」をクリックすると開始します。
デバッグを開始するとComboBox1に使用可能なイーサーネットが表示されています。接続先グループのTextBoxにArduinoのIPアドレス及びポートを指定します。Arduinoはポート10002を指定しているので接続元のポートは10002になります。
「接続」ボタンをクリックするとUDP接続を行います。接続に成功するとTextBox7にタスクが生成されたことを示す「スタート」を表示します。Arduinoからデータを受信するとパケットのデータを表示します。
UDP接続を行った後でブレークなどでアプリを一時停止するとエディターのタスクの欄に生成中のタスクが表示されます。タスクをキャンセルしない場合は不要なタスクが残ったままになりますが、キャンセルできているのでタスクが1つになっています。
「切断」ボタンをクリックするとタスクをキャンセルし「接続停止」を表示します。同時にUDP接続を切断します。
TextBox7に湿度と温度のデータが表示されているのでUDPパケットが受信できていることが分かります。
コードのデバッグを行う場合は、コードエディタでブレークポイントを置くことで一時的にプログラムを停止させることができます。
ブレークポイントはコードエディターの最左部分をクリックして●マークが表示されれば設置できています。例ではButton1がクリックされた時に発生したイベントの先頭部分にブレークポイントを置いています。この状態でButton1をクリックするとブレークポイントでプログラムが一時停止します。
F11を押すとステップ実行になるため1行ずつ内容を確認しながらデバッグを行うことができます。上部の「▶続行(C)」をクリックするとブレークポイント状態から通常の動作に復帰します。
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ソースコード全体
以下のソースコードはコンパイルして動作確認をしております。コメントなど細かな部分で間違っていたりやライブラリの更新などにより動作しなくなったりする可能性があります。参考としてお使いいただければと思います。
Imports System.Net
Imports System.Net.NetworkInformation
Imports System.Net.Sockets
Imports System.Text
Public Class Form1
Structure NET_INTERFACE
Dim name As String
Dim localip As IPAddress
End Structure
Const RXRGSZ As Integer = 256
Structure TYP_COMRING
Dim rp As Integer
Dim wp As Integer
Dim dat() As Byte
End Structure
Dim ClientUdp As UdpClient
Dim LocalNet() As NET_INTERFACE
Dim localIp As IPAddress
Dim localPort As Integer
Dim remotePort As Integer
Dim RxRing As TYP_COMRING '受信したデータを管理
Dim cts As Threading.CancellationTokenSource
Private Sub Button1_Click(sender As Object, e As EventArgs) Handles Button1.Click
Dim remoteIp As String = ""
If Button1.BackColor = Color.LightGreen Then
remoteIp = TextBox1.Text & "." &
TextBox2.Text & "." &
TextBox3.Text & "." &
TextBox4.Text
localPort = TextBox8.Text
remotePort = TextBox5.Text
Try
ClientUdp = New UdpClient(localPort)
ClientUdp.Connect(remoteIp, remotePort)
Task.Run(Sub()
RecvWait()
End Sub)
Timer1.Enabled = True
Button1.BackColor = Color.LightBlue
Button2.BackColor = Color.LightGreen
Catch ex As Exception
End Try
End If
End Sub
Private Sub RecvWait()
Dim remoteIp As String = ""
Invoke(
Sub()
TextBox7.Text = "スタート "
End Sub
)
Dim getByte() As Byte
cts = New Threading.CancellationTokenSource()
While cts.Token.IsCancellationRequested = False
Try
Dim loc_ip As IPEndPoint = New IPEndPoint(localPort, localPort)
getByte = ClientUdp.Receive(loc_ip)
For i = 0 To getByte.Length - 1
RxRingSet(getByte(i))
Next
Catch ex As Exception
End Try
End While
Invoke(
Sub()
TextBox7.Text &= "接続停止"
End Sub
)
End Sub
Private Sub GetNetworkList()
Dim netinterface = NetworkInterface.GetAllNetworkInterfaces
Dim wk(netinterface.Length - 1) As NET_INTERFACE
Dim i As Integer
Dim j As Integer = 0
Dim cnt As Integer = 0
For Each netin In netinterface
If netin.OperationalStatus = OperationalStatus.Up AndAlso
netin.NetworkInterfaceType = NetworkInterfaceType.Ethernet Then
wk(i).name = netin.Name
cnt += 1
Dim ipprperties As IPInterfaceProperties = netin.GetIPProperties
If ipprperties IsNot Nothing Then
For Each ipadrs In ipprperties.UnicastAddresses
wk(i).localip = ipadrs.Address
Next
End If
End If
i += 1
Next
ReDim LocalNet(cnt - 1)
For i = 0 To wk.Length - 1
If wk(i).name <> "" Then
LocalNet(j) = wk(i)
j += 1
End If
Next
End Sub
Private Sub Form1_Load(sender As Object, e As EventArgs) Handles MyBase.Load
ComboBoxInit()
RxRingInit()
End Sub
Private Sub ComboBox1_MouseClick(sender As Object, e As MouseEventArgs) Handles ComboBox1.MouseClick
ComboBoxInit()
End Sub
Private Sub ComboBox1_SelectedIndexChanged(sender As Object, e As EventArgs) Handles ComboBox1.SelectedIndexChanged
localIp = LocalNet(ComboBox1.SelectedIndex).localip
End Sub
Private Sub ComboBoxInit()
Dim i As Integer
Dim str As String = ""
GetNetworkList()
ComboBox1.Items.Clear()
For i = 0 To LocalNet.Length - 1
str = LocalNet(i).name & " " & "IP:" & LocalNet(i).localip.ToString
ComboBox1.Items.Add(str)
Next
End Sub
Private Sub Button3_Click(sender As Object, e As EventArgs) Handles Button3.Click
Dim data() As Byte = Encoding.GetEncoding("utf-8").GetBytes(TextBox6.Text)
If ClientUdp IsNot Nothing Then
Try
ClientUdp.Send(data, data.Length)
Catch ex As Exception
End Try
End If
End Sub
Private Sub Timer1_Tick(sender As Object, e As EventArgs) Handles Timer1.Tick
Dim sz As Integer
Dim i As Integer
sz = RxRing.wp - RxRing.rp
If sz < 0 Then
sz += RxRing.dat.Length
End If
If sz > 0 Then
For i = 0 To sz - 1
TextBox7.Text &= Chr(RxRing.dat(RxRing.rp))
RingRpAdd()
Next
End If
End Sub
'RxRingの初期化を行う
Private Sub RxRingInit()
RxRing.wp = 0
RxRing.rp = 0
ReDim RxRing.dat(RXRGSZ - 1)
End Sub
'RxRingのwpを更新する
Public Sub RxRingSet(dat As Byte)
RxRing.dat(RxRing.wp) = dat
RxRing.wp += 1
If RxRing.wp = RxRing.dat.Length Then
RxRing.wp = 0
End If
End Sub
'RxRingのrpを更新する
Private Sub RingRpAdd()
RxRing.rp += 1
If RxRing.rp >= RxRing.dat.Length Then
RxRing.rp = 0
End If
End Sub
Private Sub Button4_Click(sender As Object, e As EventArgs) Handles Button4.Click
TextBox7.Clear()
End Sub
Private Sub Button2_Click(sender As Object, e As EventArgs) Handles Button2.Click
If Button2.BackColor = Color.LightGreen Then
cts.Cancel() 'タスクをキャンセル
ClientUdp.Close()
Button2.BackColor = Color.LightBlue
Button1.BackColor = Color.LightGreen
End If
End Sub
End Class
TextBox1~4、5、8は数値以外の文字列を受け付けるため数値以外の入力を許可しないようにKeyPressイベントを追加実装しても良いと思います。KeyPressイベントについては下記記事を参考にしてください。
VB.NET(VB2022)のTextBoxの実装とイベントの追加方法
コントロールの番号やイベントハンドラーなどのプロパティ名などを変更している場合はソースコードのイベントハンドラーをお使いのイベントハンドラーに置き換えてください。
関連リンク
VB.NET(VB2022)のデスクトップアプリで動作確認したことを下記リンクにまとめています。
VB.NET(VB2022)のデスクトップアプリ開発でできること
マイクロソフトはVisual Studio以外にもVSCodeという便利なエディターを提供しています。下記リンクではVSCodeのインストールの仕方からC言語開発環境の作り方までをまとめています。
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最後まで、読んでいただきありがとうございました。
デバッグを繰り返し行う場合TextBoxのTextプロパティに直接IPアドレスやポート番号を指定しておくと入力する手間が省けるためスムーズにデバッグが行えます。